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【このままでは教員の数は増えない】教育現場に対する財務省のズレた見解

第51回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■教員の質を担保するのは何か

 改めて言うまでもなく、現代の教員は多忙であり負担は増すばかりだ。さらに複雑な問題を抱える子どもも増えており、その対応が教員にとって肉体的にも精神的にも大きな負担となっている。それにも関わらず、教員に対して十分な指導が行われていないのが現実だ。さらには、学校内におけるパワハラも大きな問題になってきている。

 そうした様々な要因が辞職につながっている可能性も大いに考えられるのだが、財務省はその原因を「指導力不足」、つまり「教員としての質が低かったから」と断定しているようだ。
 教員が辞めていくのは質が低いせいだ、ということになる。これを、教員たちは黙って受け入れるのだろうか

 さらに資料は「教員の質の向上に向けて」という項目へとつながっている。そこには、こう記されている。

「教員の質の向上に向けて、教育大学や教育学部における免許取得を中心とした現行の教員養成システム(新卒中心)から、様々な経験や学びを持つ民間企業等経験者が子どもの学びに関する専門性(子どもの心身の発達・学習の過程等)を追加的に学べば教壇に立てる開かれたシステムと抜本的な転換を図ることを検討すべき」

 現行の教員採用システムそのものを否定しているのである。
 平たく言えば、教員免許を取得しただけの人材では質が低すぎるから、民間企業などの経験者を教員にして採用して教育を任せろ、といっているようなものだ。
 新卒で採用されて、すぐに担任を任せられるのが現状だ。これでは、経験を積むどころの騒ぎではない。経験が必要なら、新任当時は副担任とかの立場で先輩たちから学び、経験を積み重ねさせることが必要になる。そのためには教員の数に余裕が必要なのだ。

■教員の経験、そして予算の問題をどうする

 経験を積む環境をつくらず、教員の質が低いと決め込む。それでいて、経験のある人材は外部から持ってくるというのは、いささか乱暴すぎないだろうか。
 様々な経験を持つ人材に、教育の場で活躍してもらうのは悪いことではない。しかし、それを教員批判の延長上に考えることは問題だろう。

 また、仮に財務省が主張するように、民間企業などの経験者からの教員採用を増やすのであれば、それに見合う予算支出をする覚悟はあるのだろうか。民間からの転職するとなれば、教員の給料は民間企業より優位性を持たせる必要がある。残業代を支払う制度に改める必要もあるだろう。教員増加の予算は出せないが、こちらの予算は認めるのだろうか。

 現在の教員の質は低く、そうした教員を増やすことには応じられない、という財務省の姿勢は、財政審の歳出改革部会で提出された資料に色濃く表れている。
 教員の質を高めるためには数を増やして、教員が学べる余裕をつくることこそが必要なことだ。しかし、その発想は財務省にはないらしい。
 こんな財務省の姿勢に、教員はどう対応していくのだろうか。

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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